RULE日本ボクシングコミッション・試合ルール
「宣言」
(財団法人)日本ボクシングコミッション(JBC)は昭和27年(1952年)4月21日、全日本ボクシング協会の推戴により日本で行われる全てのプロ・ボクシングを統轄するために1国1コミッションの方針のもとに設立された。 以後業界ならびに世論の支持を受けて順当な歩みを続け、昭和53年(1978年)10月13日付をもって財団法人としての登記を完了し、これによってJBCの基盤は不動のものとなった。世界ボクシング界は真に日進月歩であり、試合ルール等においても世界共通のルールに即してゆく基本方針に基づいて幾多の改正が行われてきた。 今回も従来のルールを改訂並びに整備することとなり、以後日本におけるJBC管轄下のもとで行われる全てのプロ・ボクシングはこの新ルールによって運営、管理されるものであることを宣言する。
2001年8月1日
(財)日本ボクシングコミッション コミッショナー 林有厚
第1部総則
第1章 コミッショナーの機能
第1条 日本ボクシングコミッショナーは、(財)日本ボクシングコミッション(以下 JAPAN BOXING COMMISSION=JBC)管轄下で行われる日本での全てのプロフェッショナル・ボクシング(以下プロボクシング)試合(試合場におけるスパーリング及び慈善試合を含む)を指揮および監督する公式権能を有する。
第2章 ライセンス
第2条 国籍のいかんを問わず、JBCの交付するライセンスを所持しない者の、日本国内におけるJBC管轄下の一切のボクシング行為を禁止する。なお、いかなるライセンスもこれを他人に貸与又は譲渡することができない。ライセンス所持者の代理をする者は、JBCから委任状の呈示または提出を求められた場合は直ちにこれに従わなければならない。
第3条 ライセンスの交付を受けようとするものは、JBC所定の用紙に必要事項を記入し、戸籍抄本、居住証明書、未成年者は親権者の承諾書その他参考書類並びに所定のライセンス料(消費税を含む)を添えて本人又は代理人ががJBCに持参し、提出しなければならない。
ただし各地により中部事務局、関西事務局、西部事務局、北海道事務局を経由する。
あらゆるライセンスは、これを申請する者の能力と実績とに基づいて交付される。
観光ビザにより来日した外国人ボクサーには、ライセンスは交付されない。
ライセンスの種類は以下の通りとする。
クラブ・オーナー、マネージャー、プロモーター、トレーナー、セコンド、マッチメーカー、ボクサー、レフェリー、タイム・キーパー、進行、アナウンサー、ドクター。
第4条 なにびとも同一人が2種類のライセンスを所持することは出来ない。ただし、クラブオーナーがプロモーターを兼ねること、または、クラブオーナーがマネージャーを兼ねることは認めるが、この場合にはプロモーターを兼ねることは出来ない。クラブ所属のトレーナーがそのクラブ所属のセコンドを兼ねることは、この限りではない。
第5条 ボクサーは、JBCの実施するテストに合格し、かつコミッション・ドクター(以下ドクターという)の身体検査(CTスキャナーテスト並びにB型肝炎テストを含む)に合格しなければライセンスの交付を受けることは出来ない。なお、年齢の制限は17歳以上36歳までとし、37歳に達した時は自動的にライセンスは失効するものとする。ただし、現役のチャンピオンについてはタイトルを喪失したときとする。また新人王戦・賞金トーナメント等で勝ち進んでいる者についても同様に扱う。
また、元チャンピオン(=日本、OPBF、世界)、世界挑戦経験者並びに本条適用時に世界ランキングにランクされている者からの申請に基づき、コミッションドクターの特別診断(CTまたはMRI、神経的な診断を含む)のうえで許可される。この場合の世界ランキングはJBCの認める15位以内の者とする。本条の申請手続きは最終試合から5年以内とする。
新人ボクサーに交付されるライセンスは33未満までとし、原則としてC級ライセンスとする。ただしアマチュアの経験者にして、(社)日本アマチュアボクシング連盟の資格証明に基づき、審査のうえC級ライセンスを免除されることもあり得るものとする。 また、必要ある場合は、別途審査によりB級の交付を考慮することもある。
第6条 なにびとも、現在において他のプロスポーツのライセンスを保持するものは、ライセンスの交付を受けることはできない。 また、他のプロスポーツに関与もしくは従事する者は、JBCにおいて審査を経たうえで、発給の可否を決定する。
第7条 すべてのライセンスの有効期間は1月1日から12月末日までの1ヵ年とする。他に事情のない限り、ライセンスの翌年への更新は許可される。その場合、ボクサー、レフェリーは、必ず1ヶ月以内の身体検査書を提出するものとする。
第8条 ライセンスされたすべての役員、ボクサーは、一切の映画、演劇、演芸、放送、座談会、サイン会、その他に出演、参加する場合は、事前にJBCに届け出るものとする。
第9条 ライセンスをされたものが、JBCルールに違反し、日本国法律に抵触し、その他ライセンスを交付される資格に欠けると裁定された場合には、JBCからライセンスの取消、一定期間サスペンド(停止)その他の処分をされる。
第3章 契約
第10条 あらゆる契約は守られ、かつ履行されなければならない。契約はすべてJBCの公式契約書で作成され、かつ、それがJBCによって承認されて初めて公式の効力を生ずるものとする。口頭による契約または同意は、すべて公式には効力を認めない。
あらゆる契約書のコピーは、その一部をJBCに提出しなければならない。
第11条 マネージャーとボクサーの契約期間は、3年間を越えてはならないし、その契約書を譲渡することはできない。期限を経過してなおかつ双方から異議の申し出がなければ、契約は自動的に更新されたものとみなす。この場合もJBCへの届出をもって効力が生じるものとする。トレードはこの限りではない。 ボクサーの試合のため、もしマネージャーが他のマネージャーにマネージメ ントを委嘱した場合委嘱されたマネージャーはその代理委任状をJBCに提出せねばならない。
また、マネージャーの取得するマネージメント料は、ファイト・マネーの33パーセントを越えてはならない。 マネージャー料以外でマネージャーとボクサー間に特約がある場合は、事前に文書によってJBCに届出なければならない。
第12条 タイトルマッチの契約書には、リターン・マッチを保証する条項を加えてはならない。プロモーターは同一の契約書で将来の試合を保証するような条項を含めてはならない。例外として再戦を認める条件として、(1)試合の判定に疑義がある場合、(2)接戦の場合、当該試合のマネージャーからの再戦の申請がJBCに提出された場合は、JBCは選手権委員会が相当と認める場合は再戦を許可する。
第4章 公式試合
第13条 プロボクシング試合は、技術を根幹とするスポーツである。従って、すべての試合は凄惨さを争うものであってはならない。 試合は、常にルールに明記された事項を尊重し、スポーツマン精神を発揚して行わなければならない。なお、世界並びに東洋太平洋タイトルマッチにおいてはJBC承認のもと当該認定団体の試合ルールを採用することができるものとする。
第14条 公式試合とは、一般に観客に有料で公開される会場において、ライセンスされたプロモーターにより主催され、出場するすべてのボクサー、そのマネージャー、セコンドがライセンスを所持し、かつレフェリー、ジャッジをはじめすべての試合役員がライセンスされた者であって、JBCから許可された試合をいう。 一旦許可された試合でもその後においてJBCルールに違反すると見なされた場合には、JBCは公式試合の取消しをすることができる。
第15条 公式試合の総ラウンド数は、原則として32ラウンド以上50ラウンド以下とする。ただし、特に許可された場合には、この限りではない。
第16条 外国籍を有するボクサー(以下外国人ボクサー)同士の試合については、当該ボクサーを招へいする前に関係資料をもってJBCに真正カードであることの証明が必要である。 なお、公式試合場におけるスパーリングは一切公式記録には加えない。
第5章 チャンピオンシップ
第17条 チャンピオンシップとは、チャンピオンとタイトル挑戦有資格者とが双方正規ウエイトで、かつJBCがタイトルマッチとして承認した10回戦以上の試合をいう。 すでにタイトルマッチとして承認された場合でも、当該選手の責任でランキングを除外せざるを得ない理由が生じたときはJBCはその承認を取り消すことができる。
第18条 ミニマム、ライト・フライ、フライ、スーパー・フライ、バンタム、スーパー・バンタム、フェザー、スーパー・フェザー、ライト、スーパー・ライト、ウェルター、スーパー・ウエルター、ミドル、スーパー・ミドル、ライト・ヘビー、クルーザー、ヘビーの17クラスにそれぞれ1人のチャンピオン(以下単にチャンピオンという)を置く。
第19条 チャンピオンは1階級1チャンピオンの原則を固持する。従って同一人が2階級のチャンピオンになることは許されない。2階級制覇のチャンピオンは10日以内にその一つを返上せねばならない。これを怠るときは自動的に軽い方のタイトルは取り上げられる。
ただし、地域が異なればこの限りではない。
第20条 JBCは、チャンピオンとタイトルマッチを行う場合、挑戦の誠意を保証するため、JBCに相当額の保証金を寄託することを命じることができる。
第21条 チャンピオンはタイトル獲得後6ヵ月毎にランキング10位以内の者と防衛戦を行わなければならない。 ただし、チャンピオンが初の防衛に成功した後は、9ヵ月毎にランキング1位の者の挑戦に応じなければならない。1位の者に支障がある場合はJBCはランキング上位者から順次適格者を指名し、正当な理由なくしてチャンピオンがこの義務を履行しない場合はタイトル剥奪の理由となる。なお負傷又は病気などの正当な理由がある場合でも、期限の猶予は45日以上に及ばないこと。1位以外の者がチャンピオンとなったときは、120日以内にランキング1位(またはこれに準ずる者)と防衛戦を行わなければならない。前チャンピオンに課せられた義務は、新チャンピオンが継承することとする。チャンピオンは指名期限の2ヶ月前までに選択試合その他の試合を行う場合は、JBCの事前承認がなければならない。
世界ランカーは当該クラスにおいては、原則として日本ランカーより上位とする。
外国人ボクサーが、世界ランカーとして来日する場合は、世界ランカーに認められている日本タイトルに対する挑戦者としての優先的な扱いはしない。空位決定戦の場合も同じとする。ただし、このことはチャンピオン自らが指名試合の挑戦者として選択することを妨げるものではない。
空位決定戦並びに指名試合出場資格は、当該クラスに少なくとも2ヵ月以上ランクされていること。なお、当該クラスのランカーをそのクラスのウエイトで勝った最近の実績を有するものについては別途審議の上考慮される。
指名試合で挑戦者として優先権を与えられている1位の者が、理由が無くチャンピオンの申し込みを忌避した場合はランキング上不利益の理由となる。従って1位の者はチャンピオンが指名試合期限に当たるときは常に申し込みに応ずる用意が必要である。かかるが故にノンタイトル試合出場は正当な理由とみなされない。
指名試合を正当な理由(負傷、病気)なく忌避した指名の有資格者(No1)は、以後6ヵ月間日本タイトル挑戦を認めない。
第22条 つぎの場合は、タイトルは空位または移動する。
(イ) タイトルマッチで、チャンピオンが正規ウエイトを維持できなかった場合タイトルは空位となる。
(ロ) タイトルマッチで、チャンピオンが正規ウエイト以外で正規ウエイトの挑戦者に負けた場合タイトルは移動する。
(ハ) タイトルマッチで、チャンピオンが正規ウエイト以外で正規ウエイトの挑戦者に勝ってもタイトルは 空位となる。
(ニ) ノンタイトルマッチでも、チャンピオンが正規ウエイトで敗れた場はタイトルは空位または移動する。
(ホ) 下位のチャンピオンが上位のチャンピオンと双方正規ウエイトで戦って敗れても下位者のタイトルは影響しないが、上位者が敗れた場合そのタイトルは空位または移動する。
(ヘ) タイトルマッチで、挑戦者がオーバーウエイトの時は、勝敗のいかんにかかわらずタイトルは移動しない。
第23条 チャンピオンが海外遠征、負傷その他正当な理由でタイトル防衛戦が行うことができない場合には、JBCの決定により「暫定チャンピオン」を置くことができる。暫定チャンピオンはタイトル獲得後120日以内に正規チャンピオンと対等の条件で統一戦を行わなければならない。正規チャンピオンが上記統一戦に出場できないときは、暫定チャンピオンを自動的に正規チャンピオンとして認定する。
第24条 チャンピオンがタイトルを返上その他の理由で空位となった場合、新チャンピオンの決定戦は原則として2ヵ月以内にJBCの指名する2者によって行われるものとする。空位決定戦の勝者は3ヶ月以内にJBCの指名する者と初防衛戦を行わなければならない。
第25条 JBCは地区チャンピオンをおくことができる。地区チャンピオンのタイトルマッチは原則として8回戦とし、6ヵ月以内に地区コミッションの認めたコンテンダーの挑戦に応じてタイトル防衛試合をしなければならない。
第26条 東洋太平洋ボクシング連盟加盟国ボクサー(以下外国人ボクサーという)にして、JBCが資格ありと認めた者はすべての日本タイトルへ挑戦することができる。ただし、チャンピオンになった外国人ボクサー(OPBF加盟国ボクサーも含む)は、離日と同時に自動的にチャンピオンの資格を失い、タイトルは空位となる。なお外国人ボクサーでJBCの新人テストを受け初のプロライセンスを取得したものに対しては、3ヵ月以上日本に滞在する場合は挑戦者として考慮することができる。
第6章 ランキング
第27条 コミッションは、毎月1回その月の各クラスの1位から10位までのボクサーランキングを決定発表する。なお、世界ランキングは、WBA、WBC、東洋太平洋ランキングはOPBF、OPBF加盟国ランキングはその国のコミッショナーの定めるものをもって公式ランキングとする。故になにびとも、JBCの定めるランキング以外のランキングを公式に使用することはできない。
第7章 プロモーター
第28条 プロモーターは、ボクシングを深く理解する日本国籍または日本国に永住権を有するものとし十分なる社会的信用を持つもので、かつ試合をプロモートするに足りる能力がなければならない。
ライセンスを申請するものは、原則としてライセンスされたオーナー、プロモーターまたは、マネージャーの2名以上の保証人を必要とする。ただし更新の場合はこの限りではない。
JBCは、ライセンスの発給に際し必要な場合前記証明資料の提出を求める権限を有する。
第29条 プロモーターは、原則として相当期間ボクシングに実績を持ち、かつプロモートするためには、JBCの公式申請書に必要事項を正しく記入し、かつボクサー、マネージャーの署名ある試合契約書、試合承諾書その他必要な書類を添付して試合日の10日前までにJBCに提出し、その許可を得なければならない。
プロモーターは前項の許可を得ずして、試合の発表、宣伝、入場券の発売などをしてはならない。
第30条 プロモーターは、試合のために必要な試合報酬、役員費、試合承認料の推定額をJBCの指示する日までにJBCに供託しなければならない。これを怠るときは、試合許可は保留または取消される。
第31条 日本国内で行われるJBC管轄下のプロボクシング試合(公式試合場におけるスパーリング及び慈善試合を含む)を放映、放送、録画、撮影する個人又は、法人は、あらかじめJBCにたいして許可申請を書面で行わなければならない。また、放送又は放映するものはJBCの定める放送承認料を納めなければならない。なお、放送承認料は放送の内容、試合の価値等を勘案して決められる。外国で行われる日本選手の試合を日本に放送する場合もこれに準じる。
第32条 プロモーターは、ライセンスのないボクサーまたはサスペンション下のボクサーと直接、間接たるとを問わず一切の交渉をしてはならない。
プロモーターは、試合終了後7日以内にその興行報告書をJBCに提出しなければならない。また、プロモーターは、試合が支障なく済んだというJBCの確認があるまでは、ファイト・マネーを支払ってはならない。
第33条 プロモーターは、JBC役員席、ジャッジ席及び記者席をリングに最も近い位置に設けなければならない。また、試合者に必要なグローブ(特にタイトルマッチは未使用の新しいもの)、十分なる数のバケツ、キャンバス用の粉末樹脂、セコンド用の椅子その他試合に必要な物品を用意しなければならない。
第34条 プロモーターは、試合開始のすくなくとも3時間前から終了までの間試合会場の入口付近の最も見易い場所に、コミッションの試合許可証を提示しなければならない。
第8章 ボクサー
第35条 ボクサーは、契約した1人の、マネージャー以外の他のマネージャーといかなる契約もしてはならない。また、ボクサーは無許可の試合(公式試合場におけるスパーリングを含む)に出場してはならない。
第36条 試合に出場契約したボクサーは、最高のコンディションを保つようトレーニングする義務をもち、かつJBCが指示した場合は、いつでも計量と身体検査を受けなければならない。
また、最初に契約した試合日以前に他の試合をしてはならない。ただし当該関係者の承諾書があればこの限りではない。
第37条 契約下のボクサーが正当の理由(負傷または病気であることをドクターが証明した場合)なくして自己の契約した試合に出場しなかった場合は、自動的に60日間の出場を停止され、事情によってそれ以上の重い処罰をされる。
また、正当の理由があった場合でも、欠場ボクサーは、回復後の第1戦は当該プロモーターによって、当該相手ボクサーと行わなければならない。ただし、そのプロモーターが、相手マネージャー及びボクサーと協議の上その必要なしと認めた場合はこの限りではない。
第38条 ボクサー・ライセンスの種別による試合ラウンド数の制限は、つぎのとおりとする。
1 C級 4回戦まで
2 B級 6回戦まで
3 A級 8回戦以上
なお進級基準は別途定めによる。
第39条 ボクサーは、試合終了後2週間を経過しなければつぎの試合に出場することはできない。
KO・TKOされたボクサーは、原則として90日間を経過しなければ自動的につぎの試合に出場することはできない。ただし負傷によるTKO敗者はドクターの診断の結果に基づき、期間を短縮して許可される場合もある。
連続4回負け、および連続3回KO・TKOされたボクサーは、120日間を経過しなければ自動的に次の試合に出場することはできない。この場合は、コミッションドクターのCTスキャナー検査を含む精密検査に合格しなければならない。
試合で意識不明となり入院したボクサーは引退勧告の理由になる。
第40条 試合出場ボクサーはすべて事前にドクターの診断に合格しなければならない。また試合後の診断が義務づけられる。
試合の臨席ドクターによって、CTスキャナー検査が必要と診断されたボクサーは、この検査に合格しなければ、以後出場を認めない
第41条 ボクサーは、試合報酬を受取ると同時に試合報酬全額の3パーセントを健康管理基金としてJBCへ拠出しなければならない。
なお、日本へ来征した外国人ボクサーについても健康管理基金への拠出が義務づけられる。拠出基準は別途定めによる。
基金は試合中の事故に限り診療契約に基づいてJBCから支払われる
第42条 ボクサーはJBCの承認があればボクサー・ライセンスにリング名を用いることができる。
第9章 マネージャー
第43条 マネージャーの年齢は満20歳以上とし、契約下にあるボクサーの利益を守るため常につぎの責任をもつ。
1 適当なるトレーニング施設を用意する。
2 ボクサーのトレーニングを監督すること。
3 ボクサーの健康ならびに肉体的安全を保護する。
4 ボクサーの収入のため、相当数の試合出場をはかる。
5 ボクサーが試合に出場するときならびにファイト・マネーを受取るときは、必ず立会う。
6 試合契約下にあるボクサーが負傷、疾病の場合は、必ず試合日の24時間前までに当該プロモーター並びにJBCへ報告する。
第44条 マネージャーは、いかなる理由があっても、他のマネージャーの契約下にあるボクサーを奪おうとくわだててはならない。
マネージャーはセコンドのライセンスがなくとも契約下のボクサーのセコンドをすることができる。
第45条 マネージャーは、レフェリー、ジャッジをはじめすべての試合役員の選択を主張することはできないと同時に、試合役員の報酬にも関与してはならない。
第46条 マネージャーが万一ライセンスを停止された場合は、契約下のボクサーは、
1 停止期間中は、任意に臨時代理マネージャーを選択することができる。
2 新しいマネージャーと契約することができる。ただし、この場合は停止マネージャーの承諾を必要とする。
第47条 マネージャー以外の者がボクサーと一緒に海外遠征する場合は、その者にJBCによって承認されたマネージャーの委任状を持参させなければならない。
第10章 トレーナー
第48条 トレーナーは、1人またはそれ以上のマネージャーと契約し、そのマネージャーの契約下のボクサーの訓練をする。
すべてのクラブまたはジムは、すくなくとも、1人の専属トレーナーを持たねばならない。
専属トレーナーが他のクラブ、ジムまたは他のマネージャーと契約する場合は、現在所属するクラブ、ジムのオーナーの承諾を必要とする。
ただし、この場合のトレーナーは、セコンド・ライセンスは与えられない。
第49条 専属トレーナーが他のジムのセコンドをする場合は、予めJBCにその旨の届出を必要とする。
第11章 提訴
第50条 ライセンスの停止中もしくは義務不履行により警告を発せられている者を除き、なにびともライセンスされた者は、契約上の不履行その他の諸問題、試合判定等に対する異議、および利害の不一致にともなう一切の紛争などについて、当該管轄地区コミッション事務局に対して提訴することができる。提訴を受けた当該地区コミッション事務局は、審議を経たうえで、必要ならば本部に再審議を求めることができる。
第2部 試合
第12章 クラスとウェイト
第51条 ボクシングのクラス別とそのウェイトのリミットをつぎのとおり定める。
1 ミニマム級 105ポンド(47.6キロ)以下
2 Lフライ級 105ポンド超え108ポンド(48.9キロ)まで
3 フライ級 108ポンド超え112ポンド(50.8キロ)まで
4 Sフライ級 112ポンド超え115ポンド(52.1キロ)まで
5 バンタム級 115ポンド超え118ポンド(53.5キロ)まで
6 Sバンタム級 118ポンド超え122ポンド(55.3キロ)まで
7 フェザー級 122ポンド超え126ポンド(57.1キロ)まで
8 Sフェザー級 126ポンド超え130ポンド(58.9キロ)まで
9 ライト級 130ポンド超え135ポンド(61.2キロ)まで
10 Sライト級 135ポンド超え140ポンド(63.5キロ)まで
11 ウェルター級 140ポンド超え147ポンド(66.6キロ)まで
12 Sウエルター級 147ポンド超え154ポンド(69.8キロ)まで
13 ミドル級 154ポンド超え160ポンド(72.5キロ)まで
14 Sミドル級 160ポンド超え168ポンド(76.2キロ)まで
15 Lヘビー級 168ポンド超え175ポンド(79.3キロ)まで
16 クルーザー級 175ポンド超え190ポンド(86.1キロ)まで
17 ヘビー級 190ポンド超え無制限
第52条 試合に出場する両ボクサーのウエイト差がつぎに掲げる制限を超える場合は、特にJBCから承認されない限り許可されない。両ボクサーのウエイトが両クラスにまたがる場合も同様とし、この場合は軽い方のクラスが適用される。
112ポンドまで 3ポンド
112ポンド超え118ポンドまで 4ポンド
118ポンド超え126ポンドまで 5ポンド
126ポンド超え135ポンドまで 6ポンド
135ポンド超え147ポンドまで 7ポンド
147ポンド超え160ポンドまで 8ポンド
160ポンド超え175ポンドまで 10ポンド
175ポンド超え 制限なし
第13章 リング
第53条 リングは、つぎの条件を備えていなければならない。プロモーターは、リングの設置についてルールに規定する条件を厳守すると同時に、試合が円滑かつ支障なく行なわれるよう最善を尽くさなければならない。
1 ロープの内側は、18フィート(5.47メートル)平方以上24フィート(7.31メートル)平方以内であること。
2 フロアーは、水平で、厚さは原則として2.5インチ(6.3センチ)以上のフェルトもしくは畳または同じ程度の柔らかい下敷きを置き、その上をキャンバスで覆うこと。
3 リングは、フロアーから測ってそれぞれ18インチ(0.46メートル)、29インチ(0.74メートル)、41インチ(1.04メートル)、52インチ(1.32メートル)の高さに強く張った4本の直径1インチ(2.5センチ)以上のロープで囲われ、ロープの角にパットを当てがうこと。
4 ロープの外側のプラットホームは、2フィート(0.61メートル)の幅をもつこと。
5 赤と青のコーナーを向かい合って設け、取り外しのできる階段をつけること。
6 リングの高さは、建物の床または地面より4フィート(1.22メートル)以上とすること。
7 リングの照明には、少なくとも合計4キロワット以上の電球を取りつけること。
第14章 グローブ
第54条 試合に用いるグローブの重さをつぎのとおり定める。
1 ミニマム級からSライト級まで8オンス(227グラム)
2 ウエルター級からヘビー級まで10オンス(283.5グラム)
公式試合場におけるスパーリングはこれより重くてもよい。
グローブの皮革の部分の重さは、内部の詰物の重さより軽くなければならない。
第55条 グローブは、すべてインスペクターの検査済みのものであって、タイトルマッチの際には、必ず未使用のものを用いなければならない。
紐は、必ず手首の外側で結び、その上をテープで巻かねばならない。グローブを折り、しぼり、ねじ曲げなどして詰物の移動をはかり、もしくはグローブの外部を傷つけたりしてはならない。
第56条 メイン・エベントのためのグローブは、レフェリーが試合者のバンデージを着用した手を検査したのちリング上で着用させることを原則とするが、インスペクター立会いのもとで控え室での着用を許可することができる。
第15章 バンテージ
第57条 バンデージは、柔らかい布であって、片方の手に巾は2インチ(5 .1センチ)長さは10ヤード(9.14メートル)を越えてはならない。バンテージは、控室でインスペクター立会いのもとに着け、その内部にいかなる物体も巻きこんではならない。 バンテージを安定するために片方の手に幅1インチ(2.5センチ)長さ6フィート(1.83メートル)の粘着性テープ(工業用を除く)を使用することは差し支えない。ただしこれをナックルパートに使用してはならない。 このルールの侵犯は、サスペンションまたは罰金またはその併用処分に付される。
第16章 服装
第58条 ボクサーの服装に関しては、つぎの事項を守らなければならない。
1 靴は、スパイクのない柔らかいものであること。
2 トランクスは、股下の長さが15センチ以上のものであって、赤、青もしくは反対の二種類を用意し、インスペクターの指示によってそのいずれかを着用すること。
3 自己の責任において安全と認めたノー・ファウル・カップを必ず着用すること。マウスピースを使用しなくてはならない。
4 上記以外のいかなる装具もガウンを除きリング内で着用してはならない。
5 試合前または試合中は、アルコールまたは他の刺激剤を使用してははならない。ワセリンその他の油脂類は最小限の適当なる防護処置と認められる場合、インスペクターの許可を得て使用することができる。有害または悪臭を発する薬品類を使用しないこと。
6 服装が破損した場合でも、レフェリーの指示がなければこれを直してはならない。
7 試合中リングサイドで使用が認められるものは次のとおり。水、ワセリン、氷、アドレナリン1/1000溶液又はコミッションドクターにより許可された同一種類のもの、粘着テープ、ガーゼ、綿、綿棒、タオル、ハサミ。
第17章 計量
第59条 試合に出場するボクサーは、JBCの発行した計量通知書を持参し、マネージャーまたはその代理人とともにJBCが指定した時刻(原則として試合前日の午後4時から午後8時の間)に指定した場所へ出頭し、JBC役員立会いのもとに、裸体となって計量しなければならない。計量に遅刻し、もしくは出頭しないボクサーは失格その他に処せられる。また、JBCが安全防護の為に当日再計量を指示する場合はこれに従わなければならない。 計量器は、日本政府検定済みの台秤または棹秤で、JBCの公認したものでなければならない。計量は、JBCで任命した役員が行い、なにびともこれに干渉することはできない。 定刻までに一方の関係者が出席せぬ場合は、立会の権利を放棄したものと解釈する。
第60条 計量直前にドクターの診断を受け、これに合格したものでなければ計量することはできない。 計量するボクサーのウェイトは、契約書に記入されたウェイトと合致しなければならない。 もし双方またはいずれかの一方がオーバー・ウェイトもしくはウェイト不足の場合には、2時間の猶予が与えられこの間は何度量ってもよい。それでもパスしない場合には不合格となる。 不合格ボクサーは、もし契約書に記入されているならば、それに基づく違約金の支払いその他の罰を課せられる。 一方のボクサーが計量に出頭してプロモーターとの契約を履行したにもかかわらず、相手が不履行の場合は、原則としてプロモーターはそのボクサーに契約代金を払わねばならない。 計量、診断に合格した者には「出場許可証」を発行する。
第61条 JBCは、正規計量時刻の少なくとも2時間前までに計量に用いる計量器を用意し、ボクサーの申し出があれば、JBC役員立会のもとに予備計量を許すこともある。
第18章 試合ラウンド
第62条 1ラウンドは3分間とし、各ラウンドの間に1分間の休憩をおく。両ボクサー、レフェリー以外なにびとも試合中リング内に入ることは許されない。なお、休憩時間は前ラウンドに含まれることとする。
第63条 公式試合のラウンド数は、4回戦、6回戦、8回戦、10回戦、12回戦、の5種類とする。なお、例外として5回戦を認める場合がある。日本タイトルマッチは、10回戦、東洋太平洋タイトルマッチ、並びに世界タイトルマッチは、12回戦とする。 ノンタイトルマッチは、原則として10回戦を超えてはならない。 公式試合場におけるスパーリング(公式記録に加えない)は原則として6回戦までとする。
第64条 試合開始後は、試合回数を延長または短縮することはできない。またいかなる休憩もコミッションの許可なくして10分間を超えてはならない。
第19章 試合出場ボクサー
第65条 試合出場ボクサー(以下単にボクサーという)は、つぎの事項を守らなければならない。
1 試合出場許可証を持参、インスペクターに提示すること。
2 試合開始の1時間前までに選手控室に入ること。
3 試合前または試合中に、アルコール類その他の刺激剤を使用しないこと。
4 試合中は、レフェリーの許可なくしてリングを去らないこと。許可を得た場合でも、つぎのラウンドの鳴る前に帰らねば失格となる。
5 両選手は、第1ラウンド開始前及び最終ラウンド開始直後レフェリーの指示に従いスポーツマンライクに握手すること。これ以外の握手はしてはならない。これに反して相手方を加撃した場合は反則打と見なされる。
6 いかなる場合でも、レフェリーに命じられたならば速やかにリングを去ること。
第66条 ボクサーはつぎのいずれかに該当する場合は試合に出場することは許されない。
1 試合進行の妨げとなるおそれのある負傷・長髪、ひげおよびその他観客に不快の念を与える風体。
2 急性炎症性疾患・感染性疾患など(感冒、ヘルペス、流行性結膜炎など)。
3 オーバー・トレーニング、過度の減量などにより全身状態不良の者。
4 視力が左右いずれも裸眼において0.3に達しない者。なお、新人ボクサーの許可基準は原則として0.5以上とする。
5 その他ドクターが試合に不適であると認定した者及びドクターの診断勧告に応じない者。
第67条 試合中全力ファイトせず、もしくは故意の反則、悪質のルール違反等をしたボクサーは、ルール第9条に基づき処罰されるほか試合報酬の一部または全部を没収される。
第20章 セコンド
第68条 1人のボクサーに許されるセコンドは3名以内とし、うち1名をチーフ・セコンドとする。
第69条 セコンドは、つぎの事項を守らなければならない。違反者は注意、警告され、なおそれに従わなければコーナーから退去を命じられ、ライセンスをサスペンドされ、または彼らのボクサーが失格させられる場合もある。
1 試合開始に先だってチーフ・セコンドの氏名を担当レフェリーまたはリングサイド・コミッション席に届けること。
2 リング内に入ることができるセコンドは1名とし、他はプラットホームにいてセコンドしなければならない。
3 ラウンドの始まる10秒前の「セコンド・アウト」のホイッスルが鳴ったならば、速やかにリングからタオル、バケツ、ビンなどあらゆる妨害物を取り去って自分もリングを降りること。
4 試合中は所定の場所に着席し、ボクサーはもとより、応援者、観客に対しても一切の声援、合図、刺激等は行わずに静粛にしていること。
5 試合中セコンドがリングに入った場合は、そのボクサーは失格となり、そのセコンドは直ちに退場され、ライセンスは自動的に取り消される。この場合でもレフェリーは試合継続を命じることもある。 試合中の棄権は、リング内にタオルを投入して表示することができるが、レフェリーのカウント中のタオルの投入は、ルール第80条第3項(KO)を適用する。タオル投入と同時にチーフ・セコンドは、リング内に入ることが許される。
6 セコンドは、試合者に水を勢いよくふきかけてはならない。また、ラウンドの間にタオルを使って風を送ることはできない。
第21章 アナウンサー
第70条 アナウンサーは試合を司会し、アナウンサーによってアナウンスされたものはすべてJBCの公式のものとする。
アナウンサーはつぎの事項を守らなければならない。
1 試合開始に先だって、試合のラウンド数(それがタイトルマッチであればその名称とラウンド数)および双方のボクサーの氏名、所属、ウェイトならびに試合役員の氏名を通告し、試合中はダウンがスリップであった場合はこれを通告し、試合終了後は採点の結果及びノック・アウト、テクニカル・ノックアウト、反則勝ち、ノー・コンテスト等のタイムを通告すること。
2 JBCから許された以外のアナウンスをしてはならない。
第22章 タイムキーパー
第71条 タイムキーパーは、リングサイドの最前列に着席し、正確なストップ・ウォッチによってすべての計時を厳正に行なう。
タイムキーパーはつぎの事項を守らなければならない。
1 各ラウンドの開始及び終了をゴングによって知らせること。各ラウンドの終了10秒前を拍子木等によりレフェリーに知らせること。
2 各ラウンドの開始10秒前にホイッスルを吹いてセコンドの退去を合図すること。
3 カウント中に3分間の規定時間が来ても終了のゴングを鳴らさずカウントを続け、カウント10にいたらないでダウン者が立ち上がったとき、はじめて終了のゴングを鳴らす。その後正味1分間の休憩に入る。
4 ダウンが起こったらレフェリーに聞こえるように大声でカウントをとり、腕を上下し、もしくは指によってレフェリーに告げる。
5 ノックアウト・タイムはカウント終了の時刻とすること。
6 ノックアウト、テクニカル・ノックアウト、反則勝ち、ノーコンテスト等のタイムを文書によってアナウンサーに知らせること。
7 試合中レフェリーの事故その他一時試合中止のやむを得ない事態が起こった場合は、レフェリーの指示がなくとも直ちに中止のゴングを鳴らし、試合時間を延長すること。
8 ゴングはリングのプラットホームと平行でリング外のニュートラルコーナーに近い所に固定する。
第23章 ドクター
第72条 コミッション・ドクター(以下単にドクターという)は、ボクシング医学に明るい医師であってボクサー並びに試合役員の健康を管理する。このドクター以外の医師の診断は公式のものとは認められない。ドクターは、JBC試合ルール並びにJBC医事規則に則って職務を遂行しなければならない。
ドクターは、つぎの義務を守らなければならない。
1 JBCの指示に従い、ボクサー並びにレフェリーその他試合役員の定時または臨時の診察をすること。
2 新たにライセンスを受けようとするボクサーならびにレフェリーその他試合役員の審査をすること。
3 試合前日の公式計量に立会い、ボクサーの身体検査を行なうこと。
4 試合中は、リングサイドの最前列に着席し、レフェリーの要請があれば負傷ボクサーの診断の結果を報告し、万一緊急事態が起こった場合には応急の処置をとること。
5 診断の結果、ボクサーが試合をするに堪えない理由を認めた場合には、即時JBCにその旨を報告し、かつ一定期間の出場停止を勧告すること。
6 試合中、ドクターは自己の判断によってレフェリーならびにJBCに試合中止を勧告することができる。
7 ドクターは、ボクサーの試合診断報告書を速やかにJBCに提出せねばならない。
第3部 審判
第24章 審判員
第73条 レフェリー、ジャッジ(以下審判員という)は、ボクシングに実際経験を有しもしくはボクシングに関する知識を有する者で、JBC・ルールのすべてに精通し、あらゆる関係方面から中立公正な立場にあり、かつJBCの資格テストに合格したものでなければならない。 審判員がルールの適用を誤り、もしくは審判上に大きな過失を犯した場合には、その羅免、停止または相当の処罰をされる。 JBCの役員は必要のある場合には審判を務めることができる
第74条 審判員は、毎月1回以上または適宜会合して、審判技術の向上、また審判ルール並びにルールに規定されていない審判上の諸問題の解釈及びこれの処置、世界の審判ルールの審査、研究などをしなければならない。
第75条 審判員はその経歴、能力などに応じてA、B、Cの3クラスに分かれ、Aクラスはすべての試合、Bクラスは原則として6回戦まで、Cクラスは同じく4回戦までの審判に従事することができる。 それぞれの試合の審判員の担当割り当ては、JBCが決定し、当該試合開始の30分前より早く発表されてはならない。
第76条 審判員並びに試合役員は、なにびとといえども、試合中または試合後のいかなる場合でも自己の関与した審判の結果についてはなにびととも議論したり、釈明したり、または新聞、雑誌、放送関係者の質問に答え、もしくはこれに意見を発表してはならない。 発表せざるを得ない場合はJBCの許可を必要とす。 審判員ならびに試合役員は、試合場以外の場所においても、つねに中立的立場を保持せねばならない。
第25章 試合の勝敗
第77条 試合の審判は、3人制(レフェリーおよびジャッジ2名)又は4人制(ノンスコアリング・レフェリー及びスコアリング・ジャッジ3名)によって行われる。各審判員は勝敗の決定に対しては平等の1票を有する。2票以上を獲得した者を勝者とし、他を敗者とする。もし、それが2票に達しないときは、ドロー(引き分け)とする。 審判員の下した決定は最終である。審判員が下したすべて試合に関する判定は、採点表記載並びに集計の誤りおよび審判員に不名誉な事実があった場合を除き、JBC以外によって変更されることはない。
第78条 試合の得点はつぎの4項目を基準として評価、採点される。
1 クリーン・エフェクティブ・ヒット(正しいナックル・パートによる的確にして有効なる加撃。有効であるかないかは、主として相手に与えたダメージに基づいて判定される)
2 アグレッシブ(攻撃的であること。ただし加撃をともわない単なる乱暴な突進は攻撃とは認められない)
3 ディフェンス(巧みに相手の攻撃を無効ならしめるような防御。ただし攻撃と結びつかない単なる防御のための防御は採点されない)
4 リング・ゼネラルシップ(試合態度が堂々としてかつスポーツマンライクであり、戦術、戦法的に相手に優れ、巧みな試合運びによって相手を自己のペースにもっていくこと)
第79条 採点は『10点法』による。その分類は、試合内容によって次の4段階とする。
1 10=10(互角の場合)
2 10=9(若干の勝ちの場合)
3 10=8(ノック・ダウンまたはこれに近い状態をともなう明らかな勝ちの場合)
4 10=7(相手が全くグロッギーでノック・アウト寸前の圧倒的な勝ちの場合)
[備考] 10=6はつけず、この場合は当然TKOである。
第80条 試合判定の分類は次の6種類とする。
1 デシジョン(判定)
イ ラストラウンドの終了後、審判員の採点結果(第77条)によって勝敗が決定した場合。
ロ 偶然のバッティングもしくは偶然の反則打による負傷で続行不能となり、試合後半(10回戦以上は5ラウンド以降)で採点により勝敗が決定された場合。(TD=負傷判定)
ハ 試合開始後、ボクサーに関係なくして、予測できない事項で予定され試合が最後まで行われなくなり、それまでの採点で勝敗が決定されたた場合。(この場合、1-ロが準用される)。
2 ドロー(引き分け)
イ 審判員の採点が双方2票に達しない場合。
ロ 試合の前半(10回戦以上は4ラウンドまで)において起きた偶然のバッティングもしくは偶然の反則打により一方又は双方が試合続行不能の場合。
ハ 双方同時ダウンでカウント・テンでも立ち上がらない場合。
ニ 双方同時ダウンでかつ、双方が80条3項ハ(ダウン3ルール)に該当する場合で双方がカウント・テン前に立ち上がった場合。
ホ 偶然のバッティングもしくは偶然の反則打による負傷で続行不能のとき、前半(10回戦以上は4ラウンドまで)または後半(10回戦以上は5ラウンド以降)の採点の引き分けの場合(TD=負傷判定)。
3 ノックアウト(KO)
イ ダウンして10秒以内に試合を続行できない場合。
ロ ラウンド開始後10秒を経過しても試合をしない場合。
ハ 1ラウンド中に有効打による3度のダウンがあった場合。(4回戦は2度)
ニ 有効打によりリングよりフロアーに落ち20秒以内に戻れない場合。
ホ 有効打によるダウンで、レフェリーがカウント中セコンドがタオルを投入した場合
4 テクニカル・ノックアウト(TKO)
イ 有効打による負傷のため、これ以上試合続行は不適当とレフェリーが判断した場合。
ロ 実力に格段の差があって一方のボクサーが甚だしくダメージを蒙って試合を停止した場合。
ハ ラウンド進行中チーフ・セコンドがタオルを投入し、もしくはラウンドとラウンドの間に棄権を申し出て、レフェリーがこれを認めた場合。
ニ ドクターが医学的見地から試合停止をレフェリーに勧告した場合。
ヘ 反則を犯したボクサー自身が負傷し試合が停止となった場合。
5 ファウル(反則失格)
審判ルール第89条の故意のファウルを犯してレフェリーが失格を宣し試合を中止した場合。
6 ノー・コンテスト(無効試合)
双方でルール違反を起こしたり、両ボクサーが八百長もしくは馴れ合いないしはコミック・ショー的な試合をし、または再三の警告にもかかわらず試合に誠意を示さなかった場合でレフェリーが双方を失格とした場合。
審判によってなされた判定が、JBC試合ルールの適用に著しく誤りがあったとJBCが裁定した場合。
第26章 レフェリー
第81条 レフェリーはルールに基づき、試合中リング内において試合を管理、支配し、かつ指揮、命令する全権を持つ。したがって、フェアか否か故意もしくは偶然のバッティングか否か、試合を続行するか否か等を決定する最終権限を有する。本ルールに規定されていない事項についても試合に関する限りは、すべてレフェリーの裁断による。 レフェリーはつぎの任務を公正、忠実かつ適切、迅速な判断に基づいて遂行しなければならない。
1 試合中ルールとフェアプレイが厳格に守られるよう監視し、必要なる注意や指示をなし、試合が円滑、真剣かつ最高に行われるよう努力すること。
2 両ボクサーの安全防護を期すること。
第82条 レフェリーは、つぎの権限を持つ。
1 試合がワンサイドの場合は、いかなる段階でも試合を中止して勝敗を決めることができる。
2 負傷その他の理由で、試合続行を不適当と認めた場合は、試合を中止して勝敗を決めることができる。
3 故意であると否とを問わずファウルを犯し、またその他のルールを守らず、フェアでない試合をし、もしくはレフェリーの命令に従わない場合は、警告の有無にかかわらず、試合を中止して、一方または双方のボクサーを失格させることができる。
4 ルールを守らないセコンドおよび必要ならばそのボクサーをも同時に失格させることができる。
5 ボクサーが加撃されることなくしてダウンし、直ちに自力で起き上がらなかった場合は、カウント・アウトまたはそのボクサーを失格させることができる。
6 試合開始のゴングが鳴ってもコーナーから立たず、あるいは立っても試合をせず、もしくは試合することを拒んだボクサーに対しては、これをカウント・アウトすることができる。
7 ダウンさせたボクサーが、レフェリーが指示に従わず、ニュートラル・コーナーへ退くことをしない場合は、カウントを中止することができる。
8 ファウルを犯したボクサーに対し、1点から3点までを減点することができる。
9 反則されたボクサーが、たとえどのような異議を申し立てようとも、その判断に従って適当な中休み(ただし5分間以内)の後、試合続行を命じることができる。
10 確認できない事態(ファウル・ダウン)に対してはジャッジの意見を聞くことができる。
11 リング上に居座り、もしくは占拠して試合進行を妨害するボクサー・セコンドその他に退去を命じることができる。
第83条 レフェリーは、試合遂行に関してつぎの処置をとらねばならない。
1 リング照明、グローブ等が正しく整備され、すべての試合役員が正しい配置にあり、両ボクサーの服装、ノー・ファウル・カップ、バンテージ等に違反のないことを確認する。
2 両ボクサーのチーフ・セコンドを確認し、リングの中央に招いて、グローブを交付する。(ただし、JBCの許可を得た場合には、選手の控え室でインスペクター立ち会いのもとにグローブを着用を許してもよい)。
3 両ボクサーおよびチーフ・セコンドをリング中央に招き、グローブが正しく着用されているかどうかを検査し、試合がJBCルールで行われることを通告し、特に注意すべき反則事項等を簡潔、明確に警告したのち、両ボクサーをコーナーへ退かせ、チーフ・セコンドがリング外に出たことを確認したのち、タイム・キーパーに試合開始の合図をする。
4 レフェリーは、つねに両ボクサーを結ぶ線を底辺とする二等辺三角形の頂点に位置するよう留意して試合を観察し、両ボクサーの中間を横切って反対側に位置してはならない。
5 試合中、レフェリーは、次の6つの命令語を用いる。
A 「ストップ」試合の中止を命じるとき。
B 「ボックス」試合の開始、続行、促進を告げるとき。
C 「ブレイク・アウェイ」(単に「ブレイク」でもよい)クリンチを解くとき。
D 「ダウン」ノック・ダウンを告げるとき。
E 「スリップ」スリップ・ダウンを告げるとき。
F 「タイムアウト」試合を中断し、タイムの停止を必要とする場合。
6 レフェリーは、ボクサーの身体に触れてはならない。また、身体に触れてブレイクさせる際には、特に一方のボクサーを強く押すことなどのないよう公平にしなければならい。
7 レフェリーはボクサーのファウル行為、特にヘッド・バッティング、ホールディング、ロー・ブロー、オープン・ブロー、チョップ・ブロー、ブレイクの際の加撃などのほか、すべての違反行為に対しては必要あらば試合を一時中止して、適当な合図または身振りで警告を与えなければならない。
8 重要でない違反行為および軽度の負傷などに対しては、なるべく試合を中断しないで、ラウンドの間に注意する。
9 試合中のファウルに対して減点する場合には、その減点数をそのラウンドの終了後、両ジャッジとコミッションに通告しなければならない。
10 レフェリーは、試合中ボクサーが負傷した場合、ドクターをリング上に招いて負傷の程度をきき、その意見を参考として続行か否かをきめる。
11 レフェリーは、試合中ノック・ダウンがあった場合には、ダウンさせたボクサーを2つのニュートラル・コーナーのうち遠い方を指示して退かせ、タイムキーパーのカウントに合わせて、そこから続け、ダウンしたボクサーにわかるように、指で秒間を示しながら、1秒毎に大声でカウントしなければならない。10をかぞえたならば、レフェリーは両手を頭上に高く上げ、ついてこれを左右に交叉して数度動かし、試合がノック・アウトで終わったことを表示しなければならない。
12 ダウンしたボクサーが、カウントが10に達しない前に立ち上がっても、その直後、新たなパンチを受けないのに再びダウンした場合は、残されたカウントを再び続けなければならない。
13 ボクサーがダウンした場合は、すべて8までカウントしなければならない。ノー・スタンディングエイトカウントとする。
14 両ボクサーが、同時にダウンした場合には、その一方がダウンしている間はカウントを続ける。もし双方とも10までに立ち上がらなければ、試合はドロー(引分け)とする。 また双方又は一方が、80条3項ハ(ダウン3ルール)に該当する場合も同じくカウントする。この場合双方がカウント・テン前に立ち上がったときは、双方が前記条項に該当する場合は引分け、一方が該当する場合はこの選手をKO負けとする
15 試合中ボクサーが、有効打によりリングの外に落ちた場合は、もしそのボクサーが自力でリングに戻らない場合には、ノックダウンと同様に相手ボクサーを遠いニュートラルコーナーへ退けさせてからカウントする。
16 各ラウンドが終わったならば、レフェリーは直ちに採点票に記入したのち、両ジャッジの採点票を集めて、これをコミッション席に渡す。これに基づく判定は、JBCがレフェリーに指示する。
17 ファウルで失格したり、または試合をストップしたときは、その理由をインスペクターに通告する。
18 各ラウンドとラウンドの中間に、両ボクサーへ、つぎのラウンドが何ラウンド目であるかを通告する。
19 試合終了後、その勝者がなにびとも分かるような勝者のコーナーを指摘し勝者の片手を上げて表示する。もしドローならば両者の手を上げる。
第84条 偶然のバッティングもしくは偶然の反則打でボクサーの一方または双方が負傷し、試合続行不可能と判断した場合には、レフェリーは、試合を停止し、つぎの処置をとる。
1 試合の前半(10回戦以上は4ラウンドまで)の場合は引き分け(テクニカル・ドロー)
2 後半(10回戦以上は5ラウンド以降)であるならば、第77条(採点)を適用する。
3 偶然のバッティングもしくは偶然の反則だにより負傷があった後に試合続行され、その負傷が正当な加撃により悪化して試合続行不可能になったときは、その時点が試合の前半(10回戦以上は4ラウンドまで)であれば引き分け、試合の後半であれば第77条(採点)を適用する。
4 ラウンドの途中に試合が停止された場合、停止されたラウンドも採点される。
第85条 レフェリーは、JBCの指示に従ってドクター健康診断を受けなければならない。リングに上がる場合は、見苦しくない、軽快な服装、ボクシングシューズをはきメガネ、指輪、時計、バックルその一切の貴金属類を身に帯びてはならない。
第27章 ジャッジ
第86条 ジャッジは、観客席から離れたリングサイド最前列の中央に向かい合って着席し、試合の推移を冷静かつ公正に観察し、両ボクサーの価値を自主的に判断し、ルールに従って採点し、これを採点票に記入する。また、ラウンドの休憩中に必要あらばレフェリーに進言し、あるいはレフェリーの質問に答えなければならない。 ジャッジは、ボクサーのファウルその他のフェアでない行為を、レフェリーが認めると否とにかかわらず自主的に評価して自己の採点に加えることができるが、レフェリーから通告されたファイルの減点はこれに批判を加えることなくそのまま正確に記入しなければならない。
第87条 ジャッジは、レフェリーを補佐してセコンドのルール違反に警告を与えなければならない。また、試合のラウンド中と休憩中たるとを問わず、なにびとに対してもいっさい話をしてはならない。
第28章 ダウンおよびファウル
第88条 ボクサーが、つぎの状態にある場合はダウンとみなす。
1 有効打により足の裏以外の身体のどんな部分でもリングの床に触れているとき。
2 ダメージを受けロープがなければダウンしていたと認められる状態のとき。
3 有効打により身体の全部あるいは半ばがロープの外側に出たとき。
第89条 つぎの各項をファウルとし、これを禁ずる。
1 ベルトライン以下の加撃(ロー・ブロー)
2 ダウン中、またはダウンから立ち上がりつつある相手を打つこと。
3 故意にホールドやクリンチ、あるいはカバーリング・アップを続けること。
4 頭、肩、前膝、肘を相手に衝き当てること(バッティング)
5 咽喉を締めたり、腕または肘で相手の顔を圧したり、足を掬ったり蹴ったり、膝で突き上げたり、あるいは抱きつき、抱え投げ、引っ張り、引き倒したりすること(レスリング)
6 開いたグローブの内側、先端、またはグローブの手首の部分での加撃、グローブ側面上部での下からの突き上げ及び側面下部での上からの叩き下し(チョップ)及びあらゆるバック・バンド・ブロー。
7 身体を一回転させて打つこと(ピボット・ブロー)、腎臓の部分を背面から打つこと(キドニー・ブロー)及びび故意に後頭部を打つこと(ラビット・パンチ)
8 グローブの親指の部分で相手の目を突くこと(サミング)
9 打たれないのに故意にダウンすること。
10 互いに戦意を示さず、あるいは互いに馴れ合いないしはコミック・ショー的試合を行い又は双方あるいは一方による作り試合(八百長)を行うこと。
11 リング・コーナー又はロープに相手を押さえ付けること及び一方の手で相手を押さえながら片方の手で加撃すること。
12 ブレークに際して打つこと及びラウンドの終わりを告げるゴングが鳴ってから打つこと。
13 試合中相手又はレフェリーに対して侮辱的あるいは攻撃的言語を使うこと。
14 ロープを握り、あるいはロープの反動を利用しての加撃、またはロープを不当に使用して相手に不利を与えたり、その他相手に傷害を及ぼすおそれのあるすべての非スポーツマン的なトリックおよび行為。
15 相手のベルトライン以下の危険性のあるダッキング。
(付則)
ルールの運営にあたり、本ルールに明記されていない事項に関しては国際ルールを参照することができる。